組織エコロジー(日本研究サーベイ)

組織進化とエコロジカル・パースペクティヴ-―「組織エコロジー」のエコロジ

組織のエコロジカル・パースペクティブは1970年代の組織研究や社会学理論の中にニッチを見出し、生態学的・進化モデル的な視角を組織研究に積極的に導入し成立・発展した理論である。

出発点:「組織は変われない」「組織は環境に適応的ないから、生き残れる確率は初めから決定されている」(もしもすべての組織が自由に環境に適応て着るならば、世の中成功した組織で溢れかえるだろう)(問題視される挑発的な前提)->「生き残る組織と生き残れない組織はどう異なるのか」

二つの流れ:
1。1970年代に「組織の個体群生態学(population ecology of organizations) 」て登場し、のちに「組織生態学(organizational ecology)」に至ったHannan, Freeman, Carrollたちの流れ
2。後に組織変動の一般枠組みとしての「進化的アプローチ(evolutionary approach)」に力点を移行したAldrichの流れ
-> 両方とも、生物生態学研究のモデルの直接的な適用や、個々の組織のミクロなメケニズムと組織群れベルのマクロ的な進化過程とのリンクへの志向など、「生態学」としての特質を強調する点で他の組織研究と一線を画す

組織エコロジーの三つの分析レベル:
1。組織の個体;2。組織個体群;3。組織群集 (Carroll, 1984)
(従来の「組織と環境」に関わる研究のほとんどは1、組織エコロジーは2と3という個体群を単位として加える)<- 現実には多様な組織が共存しており、個々の組織のみからは説明されえない
-> 競争と同調などの組織集団内におけるメカニズムを通じて研究
-> 新しい形態の組織の発生率や、変動率や、特定の形態の組織の死亡率に対してどのような環境条件が影響を与える (Hannan&Freeman, 1989)

組織エコロジーの8つのテーマ(Hanna, Polos, Carroll, 2007):
1。組織形態と個体群の論理構造
2。構造慣性と変動 (structural inertia) (個体環境適応/進化論的な淘汰)
3。年齢依存理論 (組織死亡率を組織の環境への適合度の指標とする、年齢は影響を与える)
4。社会運動の動態
5。個体群密度依存 (生存率に影響を与える密度、密度に依存した個体群の動態の研究)(Hannan&Carroll, 1992)
6。ニッチ構造 (環境における諸資源の布置状況と個体群の成長衰退との関連)(Popilarz&Zachary, 2007)
7。資源分割 (ジィネラリスト戦略とスベシャリスト戦略の間の競争が市場の分割を生じる)
8。組織の多様性 (多様性がより上位の社会レベル、経済的セクター等にどのような帰結をもたらす)(Podolny, 2005)

組織エコロジーの発展の三つの段階:
1。従来の組織研究との相違を強調するための「組織の個体群生態学」の1977年からの10年間
2。Hannan&Freemann 1989 組織生態学, Hannan&Carroll 1992 組織の個体群生態 1995 産業における組織 2000 企業と産業の人口学, Aldrich&Ruef 2006 組織進化論 -> ミクロ・マクロ各レベルのより一般的な総合化が図られる時期
3。Hannan, Polos, Carroll 2007 組織理論の論理学 ->ミクロ・マクロのリンクに新しい方向を示す

歴史背景:
1970年代には組織と環境関係への関心が昂進しながらも、従来のコンティンジェンシー理論からさらに理論を進化させるために必要な、組織と環境のダイナミックな相互作用を捉える土台を欠いていた。組織エコロジー(Hannan&Freeman, 1977)と新制度派組織論(Meyer&Rowan, 1977)はこの空白地帯にニッチを見出した。
前者はマクロな環境との相互作用の視点から組織を見る/後者は制度・文化的環境の生成過程に注目する視点

組織進化論との関係:
組織の進化図式(Weick, 1979; 藤本, 1997):環境決定論に陥らず、組織の進化を変異、淘汰、保持の三段階として捉えた上で、人間の主体的自発的な変革を契機を変異の中に組み込み、環境的な制約との相互作用を淘汰の段階に当てはめて両者の均衡の結果の変革の定着を保持と位置づけるのような、人間の主体性と環境からの制約を統合する理論
しかし、個体レベルの進化論は組織が環境との相互作用を通じて進化する過程の存在を主張することはできても、その過程の内容がいかなるものか特定できない <- 個体群レベルの観察が必要

エコロジカル・パースペクティブの本質:
組織の存続に関わる中核的な特質と、環境との相互作用によって変化する周辺的な特質それぞれの変動メカニズムの違いを主張 (Hannan&Freeman, 1984)
前提の「組織は変わらない」->「個体群の定義に関わる特質は変わらない」-> 1。変異淘汰保持の過程を通じて進化的な変動モデル;2。組織個体よりも組織個体群を組織の本質とみる

エコロジカル・パースペクティブに対する批判:
1。社会学理論としての有用性 (Young, 1988)
a) 基本概念の定義ならびに測定の曖昧さ; (社会学共通問題)
b) 主要な主張は生物学より従来の分野から導入されたもの;  (生物学的モデルはあくまで出発点)
c) 方法論的な疑問点が多い
2。新制度は組織理論への接近
前提の過激さとは裏腹に、発見結果についてはむしろ既存の社会学理論との親和性を強調:例えば「密度依存」の発見結果を新制度派の組織研究と結びつけよう、組織発生率消失率と密度(=個体数)の関係を個体群の正当性(legitimacy)と競争で解釈 (Carroll&Hannan, 1989)
新制度派からの批判(Zucker 1989):
a) 正当性と競争を直接測定したわけではなく、経験的研究の結果に結びつけても、これだけが可能な説明とは限らず、新制度派の組織理論とは無関係 (新制度派でも間接的測定が一般的)
b) また組織エコロジーが歴史的な時間ではなく、個体群形成以来の経過時間を重視する点と新制度派の相違 (反論:無視ではなく説明要因の中に組み入れている)
3。組織個体群はそれ自体独自のメカニズムを持ち、個人の属性や行動に還元されえない
先行する個人や集団から発生を説明するのではなく、個体群自体の状態から発生を説明

進化への発展 Aldrichの流れ:
一度個体群生態学に接近しながらも生態学の制約から解放された -> 生態学的の基礎概念を社会現象に適用する困難さや、生物学理論とは異なる内容の理論体系に生態学を冠するへの抵抗
進化アプローチでは、個体群の基礎理論を追求しない、諸々の既存組織研究パースペクティブの組織個体と個体群の関係図式をそれぞれ丸呑みされたまま共存

基礎概念の追求への発展 Hannanたちの流れ:
組織「個体群」にとっての種speciesをどう定義する理論と実証をどう結びつける:実際の研究では業種分類やアウトプットが基準として用いられるが、研究する側の恣意性に依存しない基準が立てられないならば、実証研究は意味をなさなくなる
Hannan, etl 2007はファジー集合論と様相論理の導入により、種の定義を含む社会的概念の形成過程に間で遡る組織理論の試みを示した:組織個体群は組織が持つ共通の形態によって定義される、形態の形成に関連する一連の過程を考察すること

 

初期の個体群生態学に対しては村上1991-1994が精力的に批判的な検討を行っている。

日本の組織を対象にした実証研究例には高瀬1989,2010と清水2001などがあり。

 

企業組織と組織個体群の存続に関する生態学的接近

企業の長期存続に関する研究:
経済危機に面し経営を継続することの難しさ/企業の積 み重なった信頼の正統性という価値
日本は老舗と呼ばれる長期存続企業が多く,様々な角度から研究が蓄積されてきている
日本の長期存続企業の特徴:
a) 総じて経営の源となる理念を大切にした堅実な経営を守り,時には大胆に変革を行い、企業が模倣しにくい事業システムを構築し競争優位を持続する
<- 経営理念や経営方針,事業の継承や変革,経営戦略,経営史の分野において,経営者や企業の 内部環境に注目した視角を基本に企業の存続に関する歴史的な知見を示してくれる.
b) ひとつの企業が一層複雑に他者と関係し合う社会において,外部環境と企業との関係
<- 経営理念が企業内で変化しない性質があるのに対し,事業システムは存続しつづけるために環境適応の変化をする性質がある
* 外部環境と組織の適応関係 -> 存続する企業の形態や規模 + 組織個体群単位の存続システム

日本の長期存続企業:%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2017-02-18-23-28-28長期存続企業はほとんどが中小企業 であり,長期存続企業は長い期間の経営を経て大規模な組織にならない場合が多いことが示さ れる.(実際すべて企業のうちほとんどは中小企業)
これまでの長期存続企業の研究は,ミクロ的視角から分析されることが多い が,経営理念のように変化しない性質とは異なり,変化可能な事業システムの分析はマクロ的 視角を採り入れる必要がある <- 個人や集団に注目するミクロ組織論と構造や体系を扱うマクロ組織論
-> しばしば活動フィールドの重複する複数の企業の併存が見られ,併存する業界内の企業間関係が存続に影響している可能性がある (長期存続企業は中小企業の形態のままで存続を果たすことから、企業の存続システムが単に競争に勝つと生き残るというシンプルなものではないかも)

長期存続企業へ従来のアプローチ:
a) 経営理念と承継
創業の源となる経営理念に関係する研究が代表的な長期存続企業へのアプローチ
-> 経営理念は企業内の規範として企業倫理の役割を持ち,行動規範のベースとして構造や戦略の指針となる、同時に経営理念の浸透により共有する価値観を従業員に認識させ,組織文化を形成する (近江商人の三方よし) (問題はどの企業もおよその経営理念については内容の重複が見られ)
長期存続企業はファミ リー企業が多くなっている.(年輪のように地道に堅実な経営を継承し,時には進化して 姿を新しくする老舗の特徴である、前川(2011))
b) 事業システム
事業システムは競争優位が持続する間基本的に変化しないものの,状況によって柔軟に業界内で取引関係の変化が生じるものである
複数の企業との取引制度システムを成す企業の集合体について,中小の企業が地域的に集まっているケースは産業集積の研究として蓄積されてきている (加藤(2006)は,産業集積における仲間型取引の機能について東大阪の金型産業の事例研究によって存続の仕組みを示した)
-> 取引ネットワークでつながった企業の集団をシステムとして捉え、長期的な存続を組織個体群単位の観点で考える
c) 長期存続企業と事業システムの存続
伝統的な事業システムは環境との不適合を生み出すことがあり,この不適合を改善 するための策が2つ考えられる: 事業システムの革新、事業の仕組みを変える/企業内に複数の事業システムをもつこと

生態学的アプローチ:
a) 組織生態学
個体群生態学における分析のモデルを組織研究に対応させる/組織と環境との関係がどのように影響するのかというものであり,組織や組織個体群の関係を検討する
組織間関係の代表的な分析枠組みとして,資源依存,組織セット,協同戦略,制度化,取引コストの5つの パースペクティブをあげている(山倉(1995))
組織生態学の主張する「あらゆる組織は構 造的慣性を備えており,現代社会における組織淘汰の過程では,高度の慣性を備えた組織のほ うが生き残りやすいという命題」が,経営戦略論の基本前提対立する(戦略的業種変更の有無よりも設立時の資本規模が組織の適応力を相対的に強く規定しており,慣性的な効果が働いている+業界内資源配分の構造や体系が存続に関係する、戦略よりも組織生態、高瀬(1989))
b) 組織進化論
オルドリッチ(2007)の進化論アプローチは,組織生態学の主張と経営学における既存の理 論を統合する形でまとめられている (山田ら(2011)は,進化過程の3つ変異選択保持に加えて闘争概念を組み込もうとし,社会運動論をもとにベンチャー企業の生き残りについてイノベーションの闘争モデルを示し)
再生産者組織とイノベーター組織の2種が生き残る組織タイ プである -> 組織の存続には独自の資源確保,正統性の獲得,個体群の形成が必要であり,これらの取引関係はひとつの仕組みとしてシステムを構成する
変異による組織個体群内の新たな組織の発 生は,組織個体群の健全なシステムが働いている(組織生態学における人口論的に,新たな組織の発生によって世代が新しく築かれなけれ ば,個体群ごと衰退してしまう)
%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2017-02-19-4-10-37c) 生物進化論
ダーウィン説では,環境は変化しない前提であるが,現在一般的となった総合学説は,環境変化の有無により,安定化選択と方向性選択のパターンに分けられている%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2017-02-19-4-14-26生物進化論の環境変動説の知見をもとに,なぜ老舗企業は中小企業が多いのかについて考察すると
-> 短期的に見れば競争優位を大企業が持つとしても,環境が変わればその競争優位の効果が得られない場合が考えられる.その場合,大企業は規模の大きさから変化させることが容易ではなく,環境適応能力は小さく抑えられよう.+ 長期的に見ると,歴史的な革命や非常に不安定な状況を企業は幾度か乗り越えていかなければならない.-> そうした激動の環境下においては,適応力の弱さにより大企業という形態は必ずしも強いとは限らず,むしろ中小企業の形態が長期的な環境適応能力に優れている場合も考えられ,中小規模の組織が多様化することで集団として全体の生存可能性を高めている可能性がある.

 

 

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