ITOCHU: Large trading firm in Japan

面接の準備のため、今回は日本の商社を見てみようと思う。商社で聞いた途端、思い出したのは去年伊藤忠が空売りファンドに攻撃された件である。それで、当時のレポートと伊藤忠のIR資料を使って、日本の商社セクションを垣間見よう。

グラウカス・リサーチは伊藤忠商事株式会社のレーティングを「強い売り推奨」としてカバレッジを開始しています

東芝は会計手法を意図的に操作し、2008 年度から 2014 年 度にかけて税引前利益を計1,518 億円水増ししていた

伊藤忠は2016 年 3 月期に大手の三井物産や三菱商事を抜いて、日本の商社の中で利益トップの地 位を獲得した(一説は商品相場の大幅下げがもたらした資源ビジネスへの打撃の中、伊藤忠商事における資源分野の痛手が小さかった。伊藤忠の純利益が非資源部門にけん引されており、他の商社が認識した大型減損の影響を同社は受けなかったという誤った認識に基づいて、同社の株価は競合を上回るに至った。)/岡藤正広社長の就任以来、伊藤忠の当期純利益は 87%増加している(2010~2016 年 3 月期)。

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<- 伊藤忠商事株式会社は同じく財務報告の訂正と不正会計が存在する:

1。伊藤忠はコロンビアの炭鉱に対する出資持分の価値が著しく下落していたにもかかわらず、不適切な区分変更によって 1,531 億円相当の減損損失の認識を意図的に回避し、2015 年 3 月期の当期純利益を過大報告したと考えている。この点を訂正しただけで、伊藤忠の当期純利益(3,006 億円)は 51%減の 1,475 億円となったはずである。

2。伊藤忠が CITIC を持分法適用関連会社とし、その利益を連結会計に取り込むことは認められるべきでないと考えている。CITIC は中国政府によって運営され、議決権の過半数を保有されている。つまり、伊藤忠が CITIC の戦略、運営、方針決定に何らかの重要な影響 を及ぼせる可能性は極めて低い。CITIC を連結会計から除外することは、伊藤忠の純利益見通 しが 20%減少することを意味する。

3。また、中国食品・流通大手の頂新に対する非支配株主持分の区分変更に伴い認識された 600 億円の特別利益について、この利益が発生したタイミングと投資先の収益性低下に照らし て、強い疑念を抱いている。2015 年 3 月期の期末わずか 4 週間前になって、伊藤忠が奇跡的に 600 億円の特別利益を発見したことは、期初計画を 600 億円未達となることが見込まれた時期 であったことと考え合わせると弊社には信じがたいことに思われる。

 

具体的には:

1。2011 年 10 月、伊藤忠は米鉱業大手 Drummond Company 傘下でコロンビア炭鉱事業を保有・運営・管理する企業 Drummond International, LLC(「ドラモンド JV」)の株式 20%の取得を発表した。伊藤忠による株式 20%の取得対価は 15 億ドル、取得時の炭鉱事業の評価額は 75 億ドルであった。手続き完了にあたり、伊藤忠はドラモンド JV への出資を持分法適用関連会社への投資と認識した。従っ て、伊藤忠はドラモンド JV の純利益の 20%を自社の損益に取り込むことが可能となった。

2015 年 3 月期には、伊藤忠は貸借対照表上ドラモンド JV に対する持分 1,979 億円を計上していた。しかしこの投資先のパフォーマンスは劇的に悪化していたことにもかかわらず、伊藤忠が減損を認識す ることはなかった。すなわち、純利益を過大に報告していた。

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a) 投資の失敗
伊藤忠による出資のほぼ直後から燃料炭の価格は急落し、2011 年ピーク時の 132 ド ルから 64%下落して 2016 年には 47 ドルに達した。ストライキや運営上の問題が炭鉱における生産を妨げ、事態をさらに悪化させた。2013~2015 年 3 月期にかけて、石炭の生産量は予想された水準を 26%下回っていた。この投資が抱える問題の多さを受けて、ブルームバーグまでもがドラ モンド JV の炭鉱資産の価値は 2013 年時点でわずか 30 億ドルであると発表した。これは伊藤忠の投資時から 60%の下落を意味する。石炭価格はその後も下がり続けた。

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b) 損失認識を回避する手段としての区分変更

2015 年 3 月期第 3 四半期の決算説明会で、伊藤忠の経営陣は「石炭価格の下落や過去のストライキ等々の状況を踏まえ」「投資回収は難しい」と述べた。しかし損失や減損を認識する代わりに、2015 年 3 月期に伊藤忠は不適切にもドラモンド JV に対する持分を「関連会社投資」から「その他の投資」(FVTOCI 金融資産)に区分変更した。さらに、伊藤忠はこの区分変更に伴い連結会計上損失や減損を認識することはなかった。この区分変更は現行の会計ルールに照らして不適切であり、ドラモンド JV の投資の失敗にかかる損失の認識を回避することが唯一の動機である。

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炭鉱が「その他の投資」に分類されてい れば、失敗した投資から生じた損失や減損が、伊藤忠の当期純利益をはじめとする損益や業績見通しに悪影響を及ぼすことはない。

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投資区分を持分法適用関連会社から一般投資に変更する際には、再評価がなされ、損益が認識される。 後に触れるように、伊藤忠は利益を膨らませる必要があったときには、頂新の再評価に伴う利益を認識 している。

c) 重要な影響力テスト
IFRSにおいて、非支配株主としての投資を「関連会社への投資」として連結損益に取り込むか否かは、IAS 第 28 号と「重要な影響力」テストに基づき判断される。IAS 第 28 号のもとで、被投資企業の議決権の 20%以上を保有していれば、重要な影響力を有していると推定され、その投資は原則的に関連会社投資として扱わなければならない。 <- 伊藤忠は 2011 年以来ドラモンド JV の株式の 20% を保有しているため、2012~2014 年 3 月期にかけて、伊藤忠はこのルールに従ってドラモンド JV を関連会社投資と認識していた。

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伊藤忠は複数の正社員をアラバマ州バーミンガムに駐在させ、コ ロンビア炭鉱の「事業管理」にあたらせている。伊藤忠の JV における機能はアラバマに拠点を置くチームに事業管理をさせることであった。 JV における同社の機 能の一つとして、伊藤忠の短期的・長期的物流ノウハウの活用を挙げている。取引の一環として、伊藤忠はドラモ ンド JV で産出した石炭の対日向け独占販売権に加え、親会社のドラモンドと共同で アジア各国の電力会社をはじめとする顧客にマーケティング・販売する権利を獲得した。

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d)会計上の訂正で 2015 年 3 月期当期純利益は少なくとも 1,531 億円減少
いかなる指標に基づい て考えても、伊藤忠の投資は失敗であり、会計ルールに従えば同社はドラモンド JV の帳簿価格 について評価損か減損を認識するべきだった。しかしその代わりに伊藤忠は投資を区分変更した。伊藤忠の 2015 年 3 月期の貸借対照表 におけるドラモンド JV の帳簿価格は 1,979 億円だった。

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伊藤忠は投資の区分変更を行った後、 2016 年 3 月期に、単体財務諸表上のドラモンド JV の価値にかかる約 465 億円の減損損失を計上した。しかし、減損の認識を遅らせていたにもかかわらず、この再評価も伊藤忠の投資の価値下落の規模を完全には認識していないと考えている。

ドラモンド JV を他の石炭企業と比較して、伊藤忠の投資の価値は 2015 年 3 月期時点でわずか 448 億円 だったと推計している。結論として、投資を不適切に区分変更する代わりに、伊藤忠は 2015 年 3 月期に少なくとも 1,531 億円の減損損失を計上するべきだった。伊藤忠の当期純利益は 3,006 億円であるから、この訂正は純利益を実に 51%減らすことになったはずである。

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2。伊藤忠の Brand-new Deal 2017 の主要目標の一つは、「非資源分野を中心とした成長戦略推進による純利 益 4,000 億円に向けた収益基盤の構築」である。この目標に向けて、伊藤忠は 2015 年 1 月 20 日、6,000 億円を投じて香港証券取引所に上場している中国の国有企業 CITIC Ltdの株式 10%を取得した。分析に基づき、伊藤忠は CITICへの投資に持分法を適用して連結会計に取り込むべきではないと考えている。2017 年 3 月期に関して、伊藤忠は 3,500 億円の当期純利益見通しの 20%(700 億円)が CITIC に由来す ると見込んでいることから、利益見通しを大幅に過大報告しただろう。

関連会社の持分に応じた損益を自社の純損益に取り込むことで、収益性、業績、株価を押し上げ ることができるからである。

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a) CITIC の 58.13%を保有するのは、中国政府が 100%株主の CITIC Group Corp. (「CITIC 親会社」)である。 CITIC が中国政府の過半数保有と支配の下にあることに照らして、弊社は伊藤忠が CITIC の方針や財務的な決定に「重要な影響力」を持ち得る可能性は極めて低いと考えている。

b) 伊藤忠は50%保有するジョイントベンチャーを介して CITIC に投資しており、その CT Holdings は CITIC の董事(取締役に相当)2 名の指名権を有している。しかし、実際に指名された董事のいずれも伊藤忠と重要なコネクションを持っているようには思われず(政治人物)、 これが実質的な影響力には当たらないと考えている。CITIC は両社経営陣が「協業について話し合うために 6 カ月に 1 度」 会っていると公言した。さらに、 弊社は、CITIC と伊藤忠の間に重要な取引は存在しないこと、経営層の人事交流もないこと、伊 藤忠から CITIC に対する重要な技術情報の提供もないことを認識している。

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そのため、伊藤忠と CITIC との潜在的なシナジー効果は極めて小さく、伊藤忠の純利益に反映される投資収益率はおそらく 11%に達するだろうが、投資に対する現金収益率は 1.6%にしかならない可能性が高い。伊藤忠がノンキャッシュの利益しか生まない巧妙な組織構造に大量のキャッシュを投じている。

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同社は長期的な純利益目標 4,000 億円を確保すべく、紙上の巨額の 利益を獲得するために、現金収益の少なさというリスクを冒した。

 

3。2015 年 3 月期、伊藤忠は予想外の減損損失を米国のシェール投資 Samson Resources とブラジルの鉄鉱石 企業 NAMISA について計上する必要に迫られたと弊社は推測する。これらの減損は持分法適用会社から期待された利益を一掃し、その結果経営陣は、損失をカバーするための利益を探すこととなったのであろう。 信じがたいことに、経営陣は期末わずか 4 週間前にその利益を発見し、これによって純利益の 20%がもたらされた。この利益の半分以上は、持分法適用関連会社であった頂新を「その他の投資」に区分変更したことによ る。

伊藤忠は 2010 年以来頂新に 18.7%の持分を有していた。保有実態にほとんど変化がなかったにもか かわらず、伊藤忠は頂新株式を保有していたアサヒとの JV を解体し、投資の区分変更を行った。 そのことによってキャッシュを伴わない紙上の特別利益を認識する素地ができた。

(2010 年頂新がアサヒに株式を新規発行した結果、伊藤忠が頂新に有していた 20%の持分は 18.7%に希薄化した。 希薄化に伴い、伊藤忠はアサヒと JV を設立し(74%:26%)、両社の頂新株式を保有させた。プレスリリースによると、JV の目的は大中華 圏市場における食品事業開発のための相互協力であった。しかし、CFI の機能は単なる持株会社にとどま った。それゆえ、CFI 設立の唯一の目的は、伊藤忠が JV を連結対象とし、そのことによって頂新に対す る持分は実質 18.7%であるにもかかわらず、頂新を持分法適用会社として扱うことであったように見える。そして、頂新の利益の持分相当を伊藤忠の連結純利益に取り込むことができた)

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a) 伊藤忠は毎度にわたり期初計画を達成し、同社の説明では利益の大半が非資源分野に由来していることから、日経 225 の優等生と見なされている。しかし財務諸表分析から、同社が 2015 年 3 月期に期初計画を達成できたのは例によって疑わしい「関連会社投資」から「その他の投資」への区分変更から生じた利益のおかげであることを示している。伊藤忠の 2015 年 3 月期の利益計画は 600 億円未達となる見込みだった。

2015 年 3 月期が終わる 4 週間前の 3 月 3 日、伊藤忠は CFI の持分 74%を 1,619 億円で売却し、非現金取引の対価として頂新の株式 17.8%を取り戻した。伊藤忠はその後頂新への投資を区分変更して「その他の投資」とし、特別利益約 605 億円を投資の評価益として計上した。

頂新の収益性は伊藤忠が出資後最初に持分法を適用した 2010 年 3 月期第 1 四半期から 低下している。

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伊藤忠がおそらく、利益の少なくとも 一部については Tingyi 株式の取得日と区分変更日の間に生じた株価上昇を根拠として計上したのであろう。税引後の特別利益(605 億円)が伊藤忠の期初計画達成のために不足していた 600 億円の穴を埋めるため会計ルールを操作している。

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*総合商社の目標と減損損失

かつて名を馳せた日本の総合商社は、コモディティー価格の下落や海外投資の失敗による多大な打撃を受けてきた。他の商社と類似するビジネスモデルを持ち、同じ困難な環境とコモディティー価格に直面しているにもかかわらず、伊藤忠は今まで他社のような巨額減損を概 ね回避してきた。実際、伊藤忠 は 2016 年 3 月期に初めて、日本の5大商社の中で当期純利益トップを達成した。

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伊藤忠の計画を達成する並外れた能力は、実際には減損損失を除く投資関連の特別利益や割安な買収案件の目立った増加に支えられている。これらの大半はキャッシ ュを生まない特別利益である。そのような利益の 83%が 2015 年 3 月期と 2016 年 3 月期に発生している。同社が必要な減損損失の認識を不適切に遅らせたり、 投資の損失処理を完全に回避したり、減損を任意のオプションと見なして いる。

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IFRS における減損の扱いはしたがって米国会計基準よりも厳しく、一般的には企業がより早く減損を認 識することを要求する。市場価値の下落や市場・経済状況の悪化といった IFRS における減損の兆候には、 コモディティー価格の下落も含まれる。それが、三井物産や住友商事といった伊藤忠の競合にあたる日本の総合商社が 2015 年にコモディティー価格の下落を受けて巨額の減損損失を出した理由である。伊藤忠は一部減損を認識したが、弊社は同社 がもっと多く認識するべきだったと考えている。

 

*伊藤忠について

伊藤忠は総負債/EBITDA 倍率が 9.29 倍、総債務/総資本比率が 57%と、レバレッジが高い状態にある。2011 年以来、投資家から、社債を通して約 3,170 億円の資金を調達してきた。債権者は伊藤忠の純利益成長に相当の信頼を抱いており、伊藤忠がより多くのフリーキャッシュフローを生み出すことに期待している。

しかし、 このレポートの中で弊社が詳細に示したように、伊藤忠の利益の質は劣化しており、また伊藤忠の連結資本の 24%に及ぶ CITIC への出資の集中リスクを懸念するべきである。

債権者はさらに、伊藤忠が今後新規投資を縮小すると予想している。しかし、伊藤忠は純利益の大きな 部分を特別利益に依存していることから、中核事業が劣化する中、目標達成のために支出を続けざるを得ない可能性がある

たとえば 2016 年 3 月期、伊藤忠の商社としての中核的な利益を表す営業利益(売上総利益、販売費及び一 般管理費、貸倒損失の合計)は前期から 17.2%減少した(2,727 億円から 2,264 億円)。この減少をカバ ーするために、伊藤忠は複数の特別利益の恩恵にあずかっている。これには PrimeSource の売却82 に伴 う 200 億円の利益、オリエントコーポレーションの資本構造の変更に伴う 90 億円の利益、Samson Resources の売却に伴う 340 億円の税務上の利益、そして CITIC の負ののれんにかかる利益が含まれる (CITIC の株価は伊藤忠の投資時から 14%下落していたにもかかわらず)。これらの利益は中核事業の成長の欠如を覆い隠してきた。

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利益源がなくなりつつある中で、伊藤忠が来期の純利益計画 3,500 億円を達成する方法は考えにくい。

 

 

このレポートについて伊藤忠の返事では<当社の会計処理に関する一部報道について>

1)コロンビア石炭事業(Drummond International, LLC)への出資について
2014 年度に、同社が潜在的議決権を有する優先株式を発行した際にジョイントベンチャー契約の見直しが行われました。これに伴い、同社の予算及び設備投資等の重要な決議事項に対する承認権を有さないこととなり、営業及び財務方針に重要な影響力を 行使することができなくなったため、持分法投資から一般投資に区分変更を行ったも のです。

2)CITIC Limited(CITIC 社)に関する連結処理について
2014 年度に、当社は CITIC 社を中心とする企業集団及び CP グループと戦略的な業務・ 資本提携に関する契約を締結しました。これに伴い、2015 年度に CP グループと共同で 設立した事業会社(当社持株比率 50%)を通じて CITIC 社の議決権株式を 20%保有し ており、同社への投資に対して持分法を適用しております。

3)頂新に関する会計処理について
2014 年度に、当社は保有持分の一部売却を行うと共に、株主間協定書を改定しました。 これに伴い、当社の同社に対する経営関与度合いが低下したため、持分法投資から 一般投資に区分変更を行ったものです。

 

また、伊藤忠商事株式会社に対するグラウカス・リサーチの返答

1。著名な監査法人による無限定適正意見は不正会計に対する防御手段にはならない。

2。伊藤忠の返答において、同社は潜在的な希薄化については触れたもののそのよう な希薄化が起きたかどうかについて明瞭に説明していない。予算及び設備投資等に対する「承認権」は現行の会計ルー ルの下では無関係である。IAS 第 28 号に基づくと、被投資企業の議決 権の 20%以上を保有していれば、重要な影響力を有していると推定され、その投資は原則的に関連会社投資 として扱わなければならない。

仮に伊藤忠が正しく、2015 年 3 月期におけるドラモンド JV の連結除外 が適切であったとしても、会計ルールは伊藤忠が投資を区分変更する時点で再評価を行うことを求めている。 伊藤忠は頂新を「関連会社投資」から「その他の投資」に区分変更したことにより特別利益 600 億円を認識 している。なぜドラモンド JV に対しては同様の再評価がなされないのであろうか。

3。CITICのケースにおいては、ジジョイントベンチ ャーが 20%の持分を保有しているという事実は「重要な影響力」の保証にはならない。

4。伊藤忠の頂新に対する実質的な持分は 2010 年にお いて 18.7%であり、伊藤忠がその投資を区分変更した時点においてもほぼ変わらなかった (17.8%)。伊藤忠はその影響力の程度が 2015 年 3 月期において大幅に変化したという何らかの証拠を提示すべきである。また頂新への 投資の再評価に関しては特別利益の認識が可能であった一方で、ドラモンド JV への投資の再評価は重大な損 失に繋がる可能性があり、利益を損なう可能性があった。しかし、会計基準は、伊藤忠が再評価の結果が良い場合のみ選択的にルールに従う、ということを許容しては

 

まとめ

まず、グラウカスが突っ込んだ3点の中、2の中国国有会社については理屈をこねる感があるが、1と3の好き勝手で区分変更をしているのは確実と思う。伊藤忠の会計手法について疑うの理由と説明はもかなり充実している。その反面、伊藤忠の反応は滑稽だ。短く通り一遍のものであり、挙げられた問題点に対する意味ある対応は全くしていないにもかかわらず、自社の過去の会計処理には「一点の曇りもないと思っている」と言い切ったり、「同じ土俵で話をすると、グラウカスのネームバリューを上げることにつながる」「騒げば騒ぐほど、彼等のネームバリューを上げることになる」なとばっかり強調して、ずいぶんぶさまだ。

しかし、こういった問題に対して、資本市場の関係者はほとんど無視するような見方。

“三菱UFJモルガン・スタンレー証券は、グラウカスがリポートを公表した翌日の7月28日、「リポートには株式市場にとってニュースとなるようなものはない」と指摘した上で、伊藤忠株の投資判断を改めて「オーバーウエート(強気)」とした。野村証券も8月2日、グラウカスが問題視した3点について、「少なくとも会計基準に明らかに準拠していないとまでの感触は得られなかった」とした。大和証券の五百旗頭治郎シニアアナリストは「グラウカスのリポートで指摘している3社の会計処理については、われわれアナリストも懸念していたところであり、それほど違和感はない」と指摘。その上で「解釈の問題であり、不正とまで言えるかどうかは疑問だ」と述べた。”

問題は事実けど、問題にならない。なぜなら、こういた会計処理はどの社でもやってることから。

“伊藤忠が指摘された投資区分の変更は、他商社にとってもひとごとではない。「15~20%出資する企業への持ち分法適用の是非は社内でよく議論になる。各社、多かれ少なかれ会計のマジックはあり、まっとうな処理と説明するのは容易でない」(商社関係者)。

また、総合商社が少数出資する資源権益の減損判定も、前提となる将来の商品市況の長期見通し次第で大きく変わる。ベースはあるが、強気か弱気か、どの見通しを組み立てるかには微妙な裁量がある。明らかな説明の矛盾がないかぎり、監査法人もその幅を容認するのが実態だ。

実は商社が標的になったのはこれが初めてでない。2015年12月、国内の調査会社ウェルインベストメンツリサーチが、丸紅に対し「巨額の減損リスク」と題したリポートを公表。特定案件の減損処理を「意図的に遅延させた疑いがある」と指摘した。

今回のケースでは、連結の適用範囲など個別案件の微妙な解釈を指摘しており、複数の会計専門家は「伊藤忠の事業に精通した者が一つひとつの案件にヒアリングしないとコメントは難しい」と見通す。総合商社は300社から多くて1200社以上の連結対象企業を抱え、収益がキャッシュの流れと一致しない“バーチャル”な会計処理を多く行っている。”

減損損失、投資収益はそもそも一定範囲内で調整できるものであり、それを使って業績を緩やかにするのはある程度世界共通でも言えるだろう。しかし、今回の件とともに暴露した一つのことは、日本古く以来特有なビジネスである総合商社のビジネスモデル問題である。

日本商社のビジネスはどう見ても資源分野と海外投資という二つの分野に大きく依頼している。市況産業に近い、投資ポットフォリーオから見るとリスクかなり分散されてないようだ。最近アメリカの経済復活と金利上昇の傾向はともかく、世界範囲の低成長低金利またドルの景気によりコモディティー価格の下落と海外投資の失敗は今後も続く可能が小さいでは言えない。今の経済環境から見ると、商社の経営投資戦略は時代遅れでも言えるだろう。グラウカスが言ったような、中核事業が劣化する中、利益の大きな部分を特別利益にいぞんさぜるを得ない、また目標達成のために支出を続けざるを得ない可能性が大きだろう。低金利の恩恵を被って資金を調達ことができでも、高いレバレッジとフリーキャッシュフローの出さない投資はいつまで続けるだろう。紙上の投資利益は中核事業の成長の欠如を覆い隠すことはいつまでできるかの一方、不安定な金融市場でいつか世界レベルの金融危機が再び起きる時、そういった海外投資は破滅までの損失を持たされる可能性もないではないだろう。

また、どの総合商社でも今は、非資源分野を中心とした成長戦略推進を向けた収益基盤の構築を強調しているけど、経路依存と会社内体制の陳腐化を考えると言ってるような簡単ではないだろう。例えば従来鉄鉱石と原油・天然ガス事業の開発投資など領域で強みのある三井物産は「資源への投資はより厳選してハードルを高くする」と「アジアの病院事業や食料と農業、海外発電などに経営資源を集中し、エネルギー・金属以外の安定収益型事業の純利益を、現在の1400億円から2020年3月期までに2000億円へと積み上げる」という二つ策を打つと公表したが、後者の収益が出るまでの時間という問題以外、総合商社として一体どこまでそういうプロジェクトへの目利きがあるのか。転換期の内、純利益が絞るとともに基礎営業キャッシュフローも当然縮小見込みであり、今まで投資家を引き寄せた商社の現金配当は持続がたいだろう。

伊藤忠の中期計画は

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一番期待されたのは食料、または住生活、繊維と情報金融、また次は機械と金属。現況を見ると:

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-> 2015年の状況はかなり厳しいらしい。自信の根拠はよく分からない。実際16h1の状況を見ると

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-> CITICの投資収益がないとかなりやばいの感じ。ROE下降はさぜるを得ないだろう。

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伊藤忠投資状況

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*伊藤忠の戦略

A。伊藤忠の非資源ビジネス、特に生活消費関連分野

当期純利益に占める資源以外(非資源)の割合は非常に大きく、なかでもその半分以上を占める生活消費関連分野は業界最大の収益規模を誇り、資源ビジネスの収益の割合が比較的大きい他商社との大きな違いとなっています。この生活消費関連分野の伸びがNo.1の原動力なのです。

例えば、バナナなどの青果物でおなじみの「Dole」は、2013年4月に伊藤忠がアジア青果物事業とグローバル加工食品事業を買収し、生産から販売までを手掛けている事業のひとつです。

このDole事業の取得により、「世界のDole」というブランド力や、70カ国以上にわたるDoleの販売網を最大限に活かして、世界中の美味しいものを、世界をフィールドとして拡販していくことが可能になりました。

新たに取得した事業に自社がもつノウハウを加えて、その価値をさらに高め、自社のさまざまな事業同士を有機的に結びつけてシナジーを生み出すことが伊藤忠流のアプローチ。ドールをはじめとする生活消費関連分野は、特にこのアプローチに強みを持つ分野なのです。

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->このノウハウとシナジーは何かよく分からない。

財閥系商社が歴史的に国の基幹産業との結びつきが強いのとは異なり、伊藤忠は繊維ビジネスが祖業であることを背景に、生活消費関連分野を中心にさまざまなビジネスを創造してきました。
業界に先駆けて、ブランドビジネスという分野に先鞭をつけたのも伊藤忠です。

1970年代、時代に先駆けて「イヴ・サンローラン」ブランドの紳士服地を輸入したことからはじまったブランドビジネスは、「ブランド」という付加価値をつけて製造販売を行うライセンスビジネスを経て、2000年代には、ブランドへの直接投資へと進化。
数々の世界的ブランドの買収・資本参加を行うなど、ブランドビジネスの先駆者としての豊富な実績とノウハウを誇ります。

-> 確かに衣料品には強いイメージがあるけど、それを食料品で通用するか。そもそもグロバールが半世紀も進んだ今、ブランドの買収・資本参加を行うのビジネシ意味は何か。また、最も大きのCITICの投資はそれと全く関係ないじゃないか。

1998年には、コンビニエンスストアチェーン大手「ファミリーマート」に参画。
経営が厳しい時期ではありましたが、約1,350億円をかけ、商社としてはじめてコンビニエンスストアの経営に乗り出しました。
現在では国内のみならず、アジアへの出店を中心とした店舗網を築くとともに、ファミリーマートを起点として、原料確保から加工・製造、流通、販売に至るバリューチェーンを構築しています。

特に生活消費関連分野は、投資実行後も長い年月をかけて地道に事業基盤を育成する必要があり、この分野で丹念に種を蒔いてきた伊藤忠のやり方が、今では他社には真似のできない大きな強みとなっています。

-> ”コンビニと商社って相性抜群” “商社の取り扱うの商品やサービスが多いことを表した言葉で、まさしくなんでも売ってるコンビニに近しい業態”

海外事例 英国タイヤ小売ビジネス

伊藤忠は2011年6月、英国タイヤ小売「Kwik Fit」の100%株式を取得しました。この買収に先立ち1994年に買収したタイヤ卸・小売「 Stapleton’s 」を、きめ細やかな顧客対応などサービス面での高付加価値をお客様に提供することで、英国タイヤ卸最大手に成長させ、店舗当たりの収益性を英国のトップレベルへ引き上げることに成功しました。この過程で蓄積したノウハウを「Kwik Fit」に投入し、現在では絶対的リーディングカンパニーに成長しています。

小売と卸、それぞれの分野のNo.1企業の買収により生まれたオペレーションの効率化とスケールメリットというシナジーも活かして、マーケットでの競争優位を築き、着実な収益成長を目指しています。

-> これから見ると、商社のビジネス投資の核心は提携強化とシナジーの造出。具体的にどのくらいが本の価値なのか、また詳細の分析が必要かも。

B。アジア全域

CITIC・CPとの戦略的業務・資本提携を中核に据えた中国戦略。

伊藤忠は中期経営計画「Brand-new Deal2017」(2015~2017年度)のもと、強みを持つ中国・アジアの非資源分野に戦略の軸足を置く姿勢を鮮明に打ち出しました。

その中核が、2015年に実現した、中国最大のコングロマリットであるCITICグループ、タイ最大で世界有数のコングロマリットであるCPグループとの戦略的業務・資本提携です。伊藤忠は、この提携によるシナジーを最大化することにより、中国・アジア等で「生活消費関連分野」を中心とした幅広い事業領域で、商機を掴み、さらに成長を加速させていく考えです。

伊藤忠の狙いは着実に成長している世界最大の中間層である。これら中間層の増大は、中国人の消費活動に劇的な変化をもたらしており、「安心・安全」な日本の商品をはじめ、商品の「質」に対するニーズが急速に高まっています。まさに伊藤忠の生活消費関連分野の強みが発揮できる市場です。
加えて、中国のGDPに占める民間消費の割合は約40%弱と、日本の約60%と比べてまだまだ低く、巨大な伸びしろがあるのです。

伊藤忠の強みである「生活消費関連分野」と「中国」。この組み合わせにより、さらに伊藤忠にしかできない競争優位を築いていきます。

-> 中国消費層という方向について問題はないと思うけど、CITICの業務(主に金融と資源、両方とも国家に重視される領域)を考えるとどうやら伊藤忠の6000億投資は財務投資に過ぎない。中国経済のリスクは予想より大き可能性もある。また進化している中国消費市場にうまく対応できるかとうかも問題である。

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